レッドチーム演習とは何か、その効果と導入方法を徹底解説
- シースリーレーヴ編集者
- 2024年11月21日
- 読了時間: 9分
更新日:2024年12月13日
目次
はじめに
レッドチーム演習とは?
レッドチームという名前の由来
レッドチーム演習の主な目的
レッドチーム演習が注目される背景
レッドチーム演習と他のセキュリティ評価手法との違い
レッドチーム演習の手順
まとめ
はじめに:サイバーセキュリティの新常識
近年、サイバー攻撃の高度化と多様化が進み、組織の防御体制に対する課題が浮き彫りになっています。従来の防御策だけでは最新の攻撃手法に対応しきれないケースも増えており、新たなセキュリティ対策が求められています。そこで注目されているのがレッドチーム演習です。本記事では、レッドチーム演習の基本から効果、導入方法までを詳しく解説します。
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レッドチーム演習とは

レッドチーム演習とは、組織のセキュリティ体制を総合的に評価・強化するために、攻撃者の視点から実際の攻撃シナリオをシミュレートするセキュリティ手法です。専門知識を持つ内部または外部の専門家チーム(レッドチーム)が、組織のネットワーク、システム、物理的セキュリティ、そして人間の要素まで含めて多角的に攻撃を試みます。
この演習では、ネットワーク侵入、フィッシング攻撃、ソーシャルエンジニアリング、物理的な侵入など、さまざまな攻撃手法を組み合わせて実施されます。これにより、技術的な脆弱性だけでなく、組織のプロセスやセキュリティポリシー、従業員のセキュリティ意識など、潜在的な問題点を明らかにすることができます。
「レッドチーム」という名前の由来
「レッドチーム」という名称は、軍事や戦略的な演習に由来しています。歴史的に、軍隊が自らの防御戦略や戦術を検証する際、自軍を「ブルーチーム」(防御側)とし、敵役を「レッドチーム」(攻撃側)として模擬戦を行ってきました。
この色分けは、戦略図や地図上で敵味方を明確に区別するために用いられ、「赤」は敵勢力、「青」は自軍を象徴する色として定着しました。これにより、指揮官や戦略家は視覚的に戦況を把握しやすくなり、効果的な戦術を立案できるようになりました。
サイバーセキュリティの分野でも、この軍事的な概念が取り入れられています。組織の防御側チームを「ブルーチーム」、攻撃シミュレーションを行う専門家チームを「レッドチーム」と呼ぶことで、攻撃と防御の役割を明確に区別し、現実的なセキュリティ評価が可能となっています。
レッドチーム演習は、攻撃者役であるレッドチームが最新の攻撃手法を駆使して組織をテストし、その結果をもとに防御策を改善する取り組みです。これにより、組織は実際のサイバー攻撃に対する耐性を高め、潜在的な脆弱性を事前に解消することができます。
レッドチーム演習の主な目的

レッドチーム演習の主な目的は以下のものとなります。
未知の脆弱性の発見と修正
レッドチーム演習の最も重要な目的は、組織内に潜む未知の脆弱性を発見し、それを修正することです。これには、未更新のソフトウェアや誤った設定による技術的な脆弱性だけでなく、従業員のセキュリティ意識の低さや不適切な業務プロセスなど、人的・組織的な弱点も含まれます。これらの脆弱性を早期に特定し対処することで、実際のサイバー攻撃から組織を守ることが可能になります。
防御能力の評価と向上
レッドチーム演習は、組織の防御側チーム(ブルーチーム)の検知能力や対応力を評価する目的もあります。攻撃が行われた際に、ブルーチームがどの程度迅速かつ適切に対応できるかを実際に検証します。これにより、防御策の有効性を確認し、必要な改善点を特定することができます。
セキュリティ意識の向上と教育効果
実際の攻撃シナリオを体験することで、従業員一人ひとりのセキュリティ意識が高まります。レッドチーム演習を通じて、具体的なリスクを体感することで、日常業務においてもセキュリティに対する注意が深まり、組織全体のセキュリティ文化の醸成につながります。
インシデント対応プロセスの検証
サイバー攻撃が発生した場合の対応プロセスを事前に検証し、改善することができます。演習を通じて、インシデント対応計画の有効性や関係部門間の連携体制を確認し、問題点があれば修正します。これにより、実際のインシデント発生時に迅速かつ効果的な対応が可能となります。
経営層への報告とセキュリティ投資の促進
演習結果を経営層に報告することで、組織が直面するセキュリティリスクを具体的に示すことができます。これにより、セキュリティ対策への理解と投資が促進され、必要なリソースの確保が容易になります。また、経営層の関与が深まることで、組織全体でのセキュリティ意識の向上にもつながります。
レッドチーム演習が注目される背景
近年、サイバー攻撃は高度化・巧妙化しており、従来の防御策だけでは新たな脅威に対応しきれないケースが増えています。攻撃者はゼロデイ攻撃や高度な持続的脅威(APT)など、先進的な手法を駆使して組織の防御を突破しようとします。
このような状況で、攻撃者の視点から組織のセキュリティを見直すレッドチーム演習が重要性を増しています。演習を通じて、未知の脆弱性や防御策の盲点を明らかにし、実践的なセキュリティ強化を図ることができます。
さらに、クラウドサービスやIoTデバイスの普及により、攻撃の対象となる範囲が広がっている現代では、レッドチーム演習による包括的なセキュリティ評価が不可欠となっています。
レッドチーム演習と他のセキュリティ評価手法との違い

レッドチーム演習は、ペネトレーションテストや脆弱性スキャンなどの他の評価手法と比べて、以下のような特徴があります。
包括的な評価範囲:技術的な脆弱性だけでなく、物理的セキュリティや人的要因も含めて評価します。これにより、組織全体のセキュリティレベルを総合的に把握できます。
攻撃者視点のシミュレーション:実際の攻撃者が行うであろう手法や戦略を取り入れ、現実に即した攻撃をシミュレートします。これにより、従来の防御策では見つけられなかった脆弱性を発見できます。
防御側の対応力の検証:ブルーチームの検知能力やインシデント対応プロセスを実践的に評価します。これにより、防御体制の強化につながります。
一方、ペネトレーションテストは特定のシステムやアプリケーションに焦点を当てた技術的な脆弱性の検証に特化しています。レッドチーム演習はこれをさらに発展させ、組織全体のセキュリティを攻撃者の視点から評価する手法と言えます。
レッドチーム演習の手順

演習の準備と計画立案
レッドチーム演習を成功させるためには、まず目的と範囲を明確に設定することが重要です。組織が直面する具体的なセキュリティリスクを洗い出し、それに対応する形で演習の目標を定めます。例えば、「機密情報の漏洩リスクを評価する」や「物理的セキュリティの脆弱性を特定する」など、具体的な目的を設定します。
さらに、演習チームの編成も重要なステップです。内部の専門家でチームを構成する場合は、必要なスキルや知識を持つメンバーを選定します。外部の専門機関に依頼する場合は、実績や信頼性を確認し、契約内容を明確にします。
攻撃シナリオの設計
攻撃シナリオは、実際のサイバー攻撃をモデルに詳細に設計します。組織の業種や特性、保有する情報資産に応じて、最もリスクの高い攻撃手法を選択します。
・フィッシング攻撃のシナリオ
フィッシング攻撃のシナリオでは、従業員に対して巧妙に作成された偽のメールを送信します。メールの内容は、社内の重要な通知や取引先からの依頼を装い、リンクのクリックや添付ファイルの開封を促します。これにより、従業員が不正なサイトに誘導されたり、マルウェアがシステムに侵入したりするリスクを評価します。
・マルウェア侵入のシナリオ
マルウェア侵入のシナリオでは、ネットワークに対して不正なプログラムを送り込み、システムへのアクセス権限を獲得する試みを行います。例えば、ウェブサイトの脆弱性を突いてバックドアを設置したり、USBデバイスを通じてマルウェアを持ち込んだりします。これにより、ネットワークセキュリティやエンドポイントセキュリティの有効性を検証します。
・物理的な侵入のシナリオ
物理的な侵入のシナリオでは、オフィスやデータセンターなどの施設への不正侵入を試みます。訪問者を装って受付を通過したり、従業員の後ろについて入室する「尾行侵入」を試みたりします。物理的なアクセス制御や入退室管理の脆弱性を評価します。
・ソーシャルエンジニアリングのシナリオ
ソーシャルエンジニアリングのシナリオでは、電話や対面で従業員に接触し、機密情報を引き出す試みを行います。カスタマーサポートやIT部門のスタッフを装い、パスワードの再設定やシステム情報の提供を求めます。従業員のセキュリティ意識や情報の取り扱いに対する教育効果を測定します。
これらの攻撃手法を組み合わせ、複雑で現実的な攻撃シナリオを構築します。攻撃のタイミングや順序、対象とするシステムや部門を詳細に計画し、攻撃者が実際に行うであろう行動をシミュレートします。
結果の分析とレポート作成
演習終了後、攻撃の結果を詳細に分析します。成功した攻撃については、その要因を特定し、どのような脆弱性が悪用されたのかを明らかにします。例えば、フィッシングメールによって従業員が不正なリンクをクリックした場合、その背景にはセキュリティ意識の不足や教育の不徹底があるかもしれません。
失敗した攻撃については、防御側の対応を評価します。攻撃がどのように検知され、どのような対策が講じられたのかを分析し、防御策の有効性を確認します。また、検知が遅れた場合や対応が不十分だった場合は、その改善点を特定します。
まとめ:レッドチーム演習で組織のセキュリティを強化しよう
レッドチーム演習は、サイバーセキュリティ対策を実践的に強化するための有効な手法です。攻撃者の視点から組織の脆弱性を多角的に検証し、技術的な弱点だけでなく、人的・組織的な問題点も明らかにします。従来の防御策だけでは対応しきれない新たな脅威に備えるためにも、ぜひレッドチーム演習の導入を検討してみてください。組織全体でセキュリティ意識を高め、より堅牢な防御体制を築くことで、サイバーリスクからビジネスを守りましょう。
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